歩行や立ち上がりを誘う設え

 特に移動能力の獲得は、乳児期の身体能力の成長・発達において重要な課題とされています。ほふく、伝い歩き、歩行・・と、こどもたちは自分自身の身体を動かすことで、身体能力や空間把握能力([拡がりのある空間の体験][立体的な空間の体験]を参照)を身につけ、探索行動を発現させていきます。ベッド上の生活だけでは難しい、このようなちょっとした運動が自発的な意欲を増し、他者との関わり要求の表現や距離感の選択など社会性の成長・発達の端緒ともなります。

 また適度に身体を動かすことで良質な睡眠をとりやすくなり、生活リズムや情緒の安定にもつながります。ベビーカーや車いすなどでちょっとひとまわり、という場面も、座位の保持の機会としても有効であると同時に、様々なものを見聞きしたり、他者と関係したりというきっかけになり、気分転換の効果もあります。

■「座る」を支える

 保育や子育てのなかでは座る姿勢をとる機会を意識的に設け、座位保持ができるように身体をつくっていきます。乳児の場合には一般に、食事や遊びのためのいすや机は身体を支えられ安全性が高い家具を選びます。

 保育施設やご家庭では一般的な家具ですが、療養環境での導入はまだ「当たり前」にはなっていません。低年齢のこどもたちが、例えば足の骨折で入院しているだけで充分に手は動くのに、このような設えがないばかりに自分で食べる機会が失われてしまうとすれば、入院中の本人やご家族のストレスも溜まりますし、ご自宅にもどってからも大変な思いをされることもあり得るのではないでしょうか? このような家具は、プレイルームや食事の場所に導入されている事例もあります([集団活動の機会])。こどもたちにとって、できるだけ「当たり前」の生活であることが、ストレスを軽減させ、主体性を含めた成長・発達につながっていきます。

■歩行や立ち上がりを誘う

(富山大学附属病院)

 周囲に、立ち上がりの手がかりになる家具などの設えがあると、こどもたちの立ち上がりを誘います。家具などに長さがあれば、伝い歩きにつながっていきます。病気や治療の影響などで、身体能力に低下が見られたり、身体能力の発達に遅れが見られる場合がありますが、リハビリ室など特別な場所での「リハビリ」だけではなく、ごく身の回りの生活のなかでの動きが自然にリハビリに結びついていきます。

 写真は、作り付けの家具を手がかりにして、こどもた立ち上がり、伝い歩きをしている場面です。家具だけでなく、玩具などが見える場所に合って、手を伸ばせば支えがあって、移動の目的になるものがあると、こども自身の「あそこに行きたい」「あれを取りたい、触りたい」といった気持ちの助けになります。

【参考文献】山田あすか:「「あの子」の記録(エピソード) 実践例に見る建築計画の意義と責任について」

■ほふくを誘う

 歩き出す時期の前に充分にほふくをすることが、背筋などを鍛えスムーズで安定的な立位と歩行、また健やかな身体づくりに役立つことが知られています。そのため保育施設では、畳敷きなど反発がありつつ、転倒時の衝撃を和らげられる仕上げがされた充分なほふくスペースを設けています。小児の病棟にもこのようなすペースを設ける例がしばしばあります。たたみや絨毯、コルクタイルなどの床座のしつらえでは、こどもたちがほふくで動くことができます。くつを脱いで過ごせるので、こどもや保護者もくつろいで滞在することができます。

関連するキーワード

トップページへ戻る