見立てを誘う環境

 玩具や遊具を他のものとして扱う「見立て」は、こどもにしばしば見られる行動です。見立て遊びのなかで、創造性や思考力、自主性が鍛えられていきます。また「見立て」は多くの場合、自分のなかだけでの見立てではなく他者と共有されることを前提とした行為です。例えば砂山をケーキに見立てて人に勧めるなど、ままごと遊びも見立ての要素を多分に含んでいます。こうした個々人の思考の共有は、他者理解や協調性に結びついていきます。

 椅子や大型ブロックなど、機能を縛りすぎない遊具や、シンプルな遊具や玩具、段差などは、さまざまな見立てを誘います。例えば「トマト」の色や形を忠実に表したしたままごとの用の玩具はトマトとしてしか扱われませんが、手の平にのる大きさの「ボール」は、ミカンやリンゴ、トマト、など似た形をもつさまざまなものに見立てられます。

 [治療・検査時の心的負担の軽減]で紹介しているような、医療機器に何かの見立てをしてこどもの心的負担を軽くするなどの工夫はしばしば見られるようになってきました。物理的な見立て以外にも、海藤尊氏の小説『ナイチンゲールの沈黙』には、MRIによる治療を揶揄して“がんがんトンネルの魔人”と呼ばれている医師が、患児に「悪い宇宙人をやっつける冒険に出る」という物語を与えて、治療を克服さあセル場面があります。現象の「見立て」によって、医療行為を患児にとって自分の理解できる領域にもってくること、自分の世界として再構築することをサポートし、治療に向かう気持ちを引き出す関わり方の事例と言えます([物語が編み込まれた環境])。

 木製の遊具をバスに見立てて遊んでいる様子です。さらに彼らが共有できる物語をもっていれば、この遊具は空を駆ける竜やペガサスになるかもしれません。見立てを誘う環境は、想像力を刺激する物語世界によっても支えられます。

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