命を感じ、親しむ

 命を感じ、命に親しむことはこどもたちの感性や心情を豊かにします。また、生き物をかわいがる経験を通して前向きな意欲をもつこどもがいることもしばしば聞かれます。

 「動いているもの」を見ていると、気持ちが和むことがあります。廊下に置かれた水槽をこどもたちがのぞき込んでいる場面からは、自然のものごとを知りたいという好奇心や、魚の世界に思いをはせて自分たちなりの物語を作っている様子などがうかがえます。生き物を間近に見ることができる環境づくりが、日々の楽しみや気分転換のきっかけになるというだけではなく、こどもの情緒の安定や、心や知の発達にも寄与していることがうかがえます。

 写真は、ある病棟プレイルームでの、ボランティアによる「アニマルセラピー」の時間の様子です。こどもたちがかわるがわる犬と一緒に遊んでいます。こどもたちが、犬たちから元気をもらっている、と病棟の保育士さんが話していらっしゃいます。

 施設での場面です(療養環境としては、病棟などに土を持ち込むことは大変難しいですが)。

 こどもたちが、ケースのカブトムシをじっと見つめています。このカブトムシは、写真のきょうだいが保育者らと一緒に卵から育てた個体で、きょうだいは羽化したときから毎日朝昼晩とケースが目に入る度に飽きもせずに眺めています。やがてカブトムシには一匹また一匹と寿命が来て、動かなくなります。5歳のこどもは、動かなくなったカブトムシを見てつぶやきました。

「どうしてカブトムシは、みんな“いのちの時間”が違うのかな?」

「カブトムシは、アナグマさんと同じ、長い長いトンネルの向こうに行ったんでしょ?」

 これらはそれぞれ、命や生と死について描かれた絵本『いのちの時間』(*)と『わすれられないおくりもの』(**)にあるフレーズがもとになったつぶやきです。

 こどもが生き物とのふれあいを通して命や生と死を感じ、それを既知の物語や言葉と結びつけて理解していっていることがわかるエピソードです([物語が編み込まれた環境],[見立てを誘う環境],[知識や物語の泉に触れる])。

*ブライアン・メロニー著, ロバート・イングペン画, 藤井あけみ訳『いのちの時間 −いのちの大切さをわかちあうために』, 新教出版社,1998

**スーザン・バーレイ著,小川仁央訳『わすれらないおくりもの』,評論社,1986

関連するキーワード

トップページへ戻る