育ち合いの仕組み

 経験や身体の大きさ、能力など「自分と違う」人との関わりを楽しみ、喜ぶ態度は、社会でのコミュニケーション能力の土台となります。こどもたちは、お互いにとって、大人とは違って自分の思いを先回りして察してくれたり、気持ちが充分に伝わらなかったりする、「思い通りにならない他者」です。

 それでも日常的な関わりの中で、大きいこどもは小さいこどもの面倒をみたり、物事を教えたりするなかで年長者の役割を果たすことを喜びますし、小さいこどもは自分にできないことができる年上のこどもと一緒に過ごすことを楽しみます。日々の生活のなかにそのような育ち合いの仕組みがあることが、こどもたちが関わり合いを当たり前だと思う態度を育てますし、こどもたちにとって大切な環境だと言えます。

 療養生活を送るこどもたちにとっては特に、お互いが支え合う大切な仲間になってもいきますし、他者を励ますことで自分自身を励ましていく関係もつくられていきます。「お姉さんが一緒に遊んでくれた」「ケイゴと一緒に嫌いな野菜をがんばって食べた」・・など、療養生活のなかでつくられた関係や記憶が、退院後の気持ちを支えていくこともあります。

(富山大学附属病院)

 写真は、廊下に対して壁やドアをもたないオープンなプレイルームで、1つのグループ(患児とその付添家族)の滞在が、異年齢の他の患児と家族を呼び込み、カードゲームの場面に発展していった様子です。

 育ち合いの関係をつくるためには、こどもたち同士が自然に関われる、関わりを一定時間継続できる場があることが有効です。例えば多床室もそのひとつです。また、食事を一緒にとることや([集団活動の機会])、廊下から様子が見えて移動の途中などに目がとまったら気軽に立ち寄れる場所、なども育ち合いの関係をつくっていきます。

(富山大学附属病院)

 次の写真は、病棟の入口に置かれたベンチで、患児と付き添い家族が滞在しているところに、他のグループが話しかけている様子です。このように、ちょっとした滞在のスペースが、関わりをつくっていきます。

【参考文献】NHK「こども」プロジェクト,『小さな勇士たち―小児病棟ふれあい日記 (NHKスペシャル―こども輝けいのち) 』, 日本放送出版協会, 2003.10

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