集団のなかでの個の尊重

 就学や、その先の社会参画へのつながりに鑑みても、集団での活動ができ、それを楽しめることは大切なことです([集団活動の機会])。一方で、それぞれが独立した個であり、それぞれの考えをもっていることを理解し、それを尊重できることも、安定した自我の形成に向けた大きな課題となります。病棟などは療養のための集団生活の場であることが前提となりますが、病気や怪我の経緯や心身の状況等、さまざまなこどもやご家族の生活や療養の場としても、個の尊重は重要な課題だといえます。自我の独立性と個別性を自覚することで、自主性や自律と自立の精神が育まれるとともに、豊かな心情や情緒の安定につながるでしょう。またなにより、自分と同様に他者にも固有の自我があることを解し、他者を大切にする心や協調性につながっていくでしょう。

 集団の中での個の尊重を環境が支えるためには、まずは一人、あるいはごく少人数でいられることが大切です。一人でいられる場所があること、一人でいるようにデザインされた場所があることは、一人という活動単位を自然に促し、またそれが他者の目から見ても自然に写ります。「一人でいること」は、時には当然のことなのだ、としてこどもや保育者が受け入れられる環境設定は、個別の活動や滞在、個が尊重される土壌づくりをサポートします。

(富山大学附属病院)

 写真は、絵本を滞在の手がかりとして、1人や小人数でいられる場所が計画されたプレイルームでの場面です。こどもと付添の家族が、小さな空間で自分たちだけの時間を過ごしています。単に小さな場所があるというだけではなく、その場所にいる理由が一緒にデザインされていると、より「1人」や「小人数」でいることが自然に成立します。

 窓辺に設けられた小さな空間で、中学生のこどもが1人で過ごしています。外が眺められること、音楽が聴けること(CDコンポが窓辺に置いてあります)など、この場所にいることを誘う環境要素が設けられており、集団の中でも自然に1人でいることができます。

 [「基地」空間],[気持ちの切り替え空間]や[小さな居場所]も参照してください。集団とつかず離れずの距離で、こどもが一人やごく少人数の集団でもいられる環境づくりは、こどもたちの発達や心のあり様、あるいはその時々の気持ちの状態の多様性をそのまま認め、受け止める土壌となります。

 プレイルーム以外にも、ロビーや廊下など、病棟内外の共用空間に設置されたベンチなどの滞在場所も、同様に1人の場面を誘うでしょう。また、患者図書館などこどもが使える院内の施設なども、1人になれる場所となります。

 症状などによっては、プレイルームなどの共用空間に出られないこどももいます。また、自分の周囲の環境での安心感が一番最初のなじみの足がかりになる場合もあります。このような場合、病床まわりでのパーソナライゼーション(その人らしく環境を設えること)が「個の尊重」に結びついていきます([自己の成長の確認])。

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