アフォーダンスの演出

 アフォーダンスとは、「もの」などの環境に内在する、動物にとっての行為の可能性と定義されます。人などの動物はそれがある「もの」であるから行為・行動を起こすのではなく、それがある行為・行動を可能にするものであるから、その行為に至るのだ、という考え方です。例えば切り株に人が腰掛けるのは、それがいすだからではなく、座るのにちょうど良い高さ・大きさだったからだ・・などと説明し、「(その)切り株(の形状や状態)が、人に、座ることをアフォードした」と表現します。

 こどもたちは、このような、ものなどの環境と自分の行為・行動の関係についてより原理的です。例えば「○○ちゃん、テーブルには登らないよ」と、口にする機会が、親や保育者にはしばしばあります。それは、テーブルがこどもにとって、登りたくなる、登れるだろうと判断できる形状をしているからです。テーブルの形状や状態は、こどもに、登ることをアフォードしているのです。逆に、テーブルの上に例えば食事が所狭しと並んでいたら、それでも登るこどもは少ないですね。そのとき、テーブルの状態は、こどもにとって登れない状態だと判断されている(テーブルの状態が、登ることをアフォードしていない)のです。

 アフォーダンスの概念で環境を見てみると、こどもの身の回りにはたくさんのアフォーダンスがあること、またアフォーダンスの演出をすることで、こどもたちの挑戦心や冒険心をくすぐるながら、こどもたちが自ら、やりたいと思う気持ちを引き出すことができることに気づきます。このように、行為や行動を誘う仕掛けを周囲に配することで、こどもたちの自主性・主体性・意欲を育てることができます。またあるものと、自分の身体や身体能力がある行為・行動が可能かどうかの判断と結果を積み重ねることで、空間と自分の身体を適切に把握できる能力が育っていきます。また、段差を腰掛けやテーブルなどとして使っていくことは、一種の見立てとも言え、ものから遊びを発展させていく思考力や、豊かな感性の成長にもつながるでしょう。

 明確な目的がある遊具ではなく、段差や面積などが提示されるだけの遊具や家具、オブジェなどはこどもにさまざまな行為や遊びをアフォードします。

 写真の家具と設えは、40㎝の高さの台を挟んで、20㎝の高さの小上がりのスペースと、床と同じ高さの畳のスペースがある空間です。この±0㎝、+20㎝、+40㎝という高さの組み合わせによって生まれる段差が、「座ったときの机状のスペース」「立ったときの机状のスペース」としてこどもたちに使われています。40㎝の高さは、大人が座る場所にもなります。20㎝の高さの小上がりに大人が腰掛けるときには、足を投げ出して座る姿勢になります。

 同じ場所で、20㎝の高さの段差はこどもの「座る」場所にもなっています。

 ここでは「高さ」が、さまざまな居方をアフォードしています。こうしたさまざまな場面を喚起する設えは、居方の豊かさにつながります。

 [歩行や立ち上がりを誘う仕掛け]や[身体を動かす仕掛け]では立ち上がりや、段差を登るなどの行為がアフォードされています。また、そうした行為そのものがこどもたちにとって挑戦したり、身体を動かしたりする遊びになっています。

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